もるたん主義

国際政治学のブログ

国際システムの無政府性

こんにちは、もるたんです。これより国際政治学の解説を始めたいと思います。よろしくお願いしますです。第1回は「国際システムの無政府性」について。無政府性こそ国際政治の最大の構造的特徴であり、私たちが一番最初に学ばなければならない最重要事項です。

その前に「国際システム」という用語について。国際システムとは、国家を基本単位とし、その相互作用からなる体系のことです。とりあえず大ざっぱに「諸国家からなる集合」と考えておけばよいでしょう。

◆国際システムの無政府性

国際システムの最大の特徴は何と言ってもそれが無政府状態アナーキー)のシステムであることです。国際システムが無政府状態であるとは、「諸国家より上位の権威を有し、各国に強制力を持って命令を下すことができる機関が存在しない」ということを指します。単純に言えば「世界政府なんてありません」ということです。

国内においては、私たちは政府を有します。そして物理的な暴力手段は政府の機関によって合法的に独占されています(例えば警察や機動隊は正当な理由があれば私たちを殴ったり撃ったり拘束したりすることができますが、私たち一般市民にはそうした行為は原則許されていません)。

しかし諸国家からなるシステムにおいては、物理的な暴力手段――軍事力――は誰にも(どの国にも、どの機関にも)独占されていません。国内社会において警察や裁判所が私たちに強制力をもって命令を下すことができるのと違い、国際社会においてはそのような強制力をもった機関は存在しないのです。

国際システムの無政府性、すなわち世界政府の不在。これこそが国際政治学を学ぶ人が最初に理解しなければならない、国際政治の最大の特徴です。

国際連合≠世界政府

国際連合は加盟国間の利害を調整する機関であり、決して加盟国より上位の権限を有しているわけではありません。国連憲章国連の決議には拘束力はなく*1国連は加盟国に対して決議に強制的に従わせることはできないのです。加盟国は決議の内容を履行しなかったとしても、批判はされても、何らかの強制力で罰せられることはありません。

国連のトップである事務総長も、当然ながら世界政府の大統領などではありません。米国の大統領に与えられるような拒否権や日本の首相のように議会を解散させる権限などはなく、ましてや自身の権限で動かすことのできる軍隊も持っていないのです。

◆安全保障――自助のシステム

国内においては上位の統治機構として国家あるいは政府が存在します。暴力手段は国家によって独占され、私たち一般市民は暴力を行使する権限を持ちません。それゆえ、国家権力たる警察や機動隊は時には暴力を行使して犯罪を取り締まり、暴動を鎮圧できるのです。要するに、私たちの安全は国家の組織する機関によって守られているわけです。

ところが上述の通り、国際システムにおいてはこうした上位の統治機構が存在しません。暴力手段を独占する世界政府は存在していないのです。国家の安全を日常的に守ってくれる機関は存在せず、危機が迫っても世界警察に110番をかけることはできません。とすれば、国家は自己の生存と安全をどのように守ればよいのでしょう。

答えの一つは、自助(セルフ・ヘルプ)によってです。自分の安全は自分で守るというのが国家の行動原則になります。もちろん現実には、危機が迫れば同盟国が援助してくれるケースは多いのですが、それとて確実ではありません。*2

軍事力が特定の機関に独占されない限り――それは必然的に超国家的機関になります――、この世界の無政府性は程度の変化こそあれ、質的な変化は起こり得ないでしょう。

◆国際政治とは――国内政治と比較して

最後に、国際政治とはつまるところ何なのか、これを国内政治と対比してまとめてみます。

国内政治とは、一元的な統治機構による支配を前提として、その支配のあり方を巡って展開されるものであると言えます。また、この統治機構は、軍隊や警察などの暴力手段を独占しており、これを合法的に行使することができます。

国際政治とは、国内政治におけるような一元的な統治機構を欠いた状況で、各国家の間の取引・協力・紛争という形で展開されるものであると言えます。ここでは、どの国家も暴力手段を独占していません。言い換えれば、各国家に暴力行使の権限が委ねられているというわけです。

上位の統治機構を欠いているという状況、「無政府状態」こそ国際政治の構造的特徴であり、この状況下で行われる政治が国際政治なのです。

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◆◆◆

第一回「国際システムの無政府性」は以上です。

最後まで読んで頂きどうもありがとうございました。

蓮野もる。

*1:ただし安保理決議を除く。

*2:なぜなら、同盟条約の義務を強制的に履行させる機関が存在しないからです。同盟国はいつでも裏切るかもしれず、裏切った場合に同盟国を処罰する機関は存在しないのです。